北の国日記2016(第29話)

7月中旬③

 

 

風穴を抜けて岩場に出ると南側に絶景が拡がる。

大樹海だ。

 

岩場は累々たる岩の積み重なり。

隙間だらけで、ここがナキウサギの住み処だ。

晴天の日中にはまず姿を現さないとのことだが、時々鳴き声が聞こえてくるという。

 

 

車田利夫さんという方の論文によると、2004 年にこの生息地を調査し、成体6 匹、当歳個体1 匹を確認して、この風穴には恐らく10 匹ほどがいるだろうと推定している。

ナキウサギ、正式にはエゾナキウサギで、大陸に広く分布するキタナキウサギの亜種とされている。

 

大雪山系、夕張山系、日高山系、そしてここ北見山系に分布が知られているが通常はもっと標高が高い(標高800m 以上と言われる)ところに生息地があるのだが、ここは400m程度と異例に低い。

と言う事はここの集団は完全に孤立しており、恐らく氷河期が終わった1 万年前以降、隔離されたまま今日まで行き続けてきたと考えられている。

こんな小集団でよくぞ生き延びてきたなあ、と言う感想だ。

絶滅しないことをひたすら願うだけだ。

 

 

山から下りて置戸の駅(廃線になっている)まえの食堂で昼ごはん。

店内に夢枕獏さんの色紙があった。

獏さんもいろんなところで釣りまくっているねえ。

 

 

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