北の国日記2016(第14話)

2月中旬②

 

 

周囲を見渡すと遙か沖合になにやらある。

人のようにも思え、あちらにも釣り人がいるのかと思い氷原をいくこと15分。

 

近づいてみると人と思えたのは杭の先に束ねて絡めてある縄で、そこはあの有名な「氷下漁」の仕掛けのところだった。

そしてなんと幸運なことに、その時、ちょうど漁師さんがスノーモビルでやってきて網揚げを始めたのだ。

 

 

氷面に開けた長さ1.5m、幅40cm くらいの網揚げ口と、そこから10mほど離れたところにある2 カ所の40cm 四方ほどの網紐口で、それらの口に張った氷を割って紐と網が動くようにする。

それからやおら網を上げるのだが、結構な重労働。

 

暫しするとチカや小さなカレイが網に見えてくる。

網尻を氷の上に上げ、スノーモビルの後ろに付けたソリの中に魚を流し込む。

 

それからカレイ(川ガレイ)、変な細長い魚、カジカ(小さい)などをそこから外に放り出す。

結局持ち帰るのはチカとコマイだけのようだ。

 

 

氷面に投げ出された魚はたちまち凍り付く。

実はこの魚を狙って大袈裟に言えば「北海道じゅう」のオオワシが今、野付半島に集まっているのだ。

先日の日記でオオワシ軍団を紹介したが、あの連中が、氷下漁の網揚げを見つけて集まってくる(はずな)のである。

 

ところがあに図らんや、この日は1 頭も寄ってこない。

漁師さん曰く、「あんたがいるから来ないんや」

 

うん、それもそうだ、真っ赤なジャケットを着たのがいたらどんな遠く、国後島からでもいることが分かる。

集まってくるわけがないなあ。

諦めて、穴釣りの釣り人のところに戻った。

 

かなり網の場所から離れて時々振り返ったのだが、やはりオオワシは集まってこない。

あんなに餌が氷の上にあるのにねえ。

穴釣りではチカがぼつぼつ釣れていたようだ。

 

 

 

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